元祖大師御法語 後編
第十六 念珠
問。
念佛せんには、かならず、念珠を、もたずとも、くるしかるまじく候うか。
答。
かならず念珠を、持つべき也、世間の、うたを、うたい、舞を、まうすら、その拍子に、したがう也。
念珠を、はかせにて、舌と手とを、うごかす也。
ただし無明を、断ぜざるものは、妄念おこるべし、世間の客と、主とのごとし。
念珠を手にする時は、妄念の、かずを、とらんとは、約束せず。
念佛のかずとらんとて、念佛の、あるじを、すえつるうえは、念佛は主じ、妄念は客也。
さればとて、心の妄念を、ゆるされたるは、過分の恩也。
それに、あまさえ、口に様々の、雑言をして、念珠をくりこしなどする事、ゆゆしきひが事なり。